美少女ゲームのイノベーションのジレンマと破壊的商品の可能性
「minori」代表兼プロデューサー酒井伸和氏インタビュー記事を読んで。
まさにイノベーションのジレンマに陥った市場のようですね。うるさがたのユーザーが「高品質」を求めて、それに対応すべく「コスト高」になるのに、そういうユーザー自体がどんどん減っているジリ貧市場。
逆に破壊的イノベーションの余地がありそうです。
「美少女ゲームの市場では軽く見られてしまいがち」な「安く、短めのもの」を、美少女ゲーム市場の既存ユーザーではなく、無消費者に売って新市場を開拓する道です。
簡単に言うと、従来の美少女ゲーマーに売ることを考えずに、新しいゲーマーにウケるような、新しい商品カテゴリーを作る道です。
新市場開拓として「これまで美少女ゲームをやったことのない人」に向けて、既存の商品カテゴリーとは異なる商品を作ってみてほしいですね。
これって評論家ぶってるわけじゃなくて、実際にやってみたいのですよ。
ぼくはアニメの『CLANNAD』『ひぐらしのなく頃に』『Phantom~Requiem for the Phantom~』『Fate/stay night』などで美少女ゲームに興味を持ったんですが、やってません。やってない理由は、まさに正しく分析されてるわけです。プレイ時間が長過ぎるんですよ。
CGの解像度とかも、気にするのは既存ユーザーです。新しいカジュアルユーザーは既存ゲームを知らないので、「粗い」画像でも「そんなもん」と思うし。だいたい、空き時間にスマホや携帯ゲーム機でやりたいですよね。大画面でやる前提じゃないという。
これらの「破壊的」な対比は、まさにコンシューマーゲームとソーシャルゲームの関係と同じなんじゃないかと思います。
なので、いち「ノン・ユーザー」として、もっとカジュアルに遊べるローエンドな美少女ゲームがあったらいいのになーと思ってます。
平均年収は300万円以下?! 衰退化が止まらない美少女ゲーム業界の現状(3/4) | ビジネスジャーナル:
(※引用注:減少傾向になってしまった原因について)それに加え、いまは全てのコンテンツにスピード感が求められるようになってきたからだと思います。いまはテレビアニメですらスピード感が求められ、一昔前は4クール放送(放送期間が約1年)だったのに、いまではほとんどが1クール(放送期間が約3カ月)になりました。1クールの実放映時間は5時間程度です。それに比べて美少女ゲームは長い。1タイトルで読むテキスト量はだいたい1M(メガ)から2Mです。1Mのプレイ時間の目安は、だいたい18~20時間くらい。ボイスを飛ばし読みでもその半分くらいです。そうなると圧倒的にプレイ時間が長くて、時代の求めるスピード感とは相反するんです。他人と話題を共有し、輪を広げていくといった点において、プレイ時間が長すぎることはデメリットでしかありません。アニメや映画の評論に対してゲームの評論が少ないのも、この辺が原因のような気がします。
ならば安く、短めのものを作ればいいかといえば、そういったものは美少女ゲームの市場では軽く見られてしまいがちです。企画にかかる労力を考えると、短いものを安く短期間で作ることは制作上のストレスにもなります。それを避けるために、ライトノベルや漫画などはひとつの作品を完結していなくともある程度たまったところで単行本として発刊し、コストを回収するのですが、美少女ゲームが同じことをすると“分割”と称され、避けられる傾向にあるようです。
うーむ、まさにイノベーションのジレンマに陥ったプレイヤーの典型的な発言なんですよね。おおむね「高級」と冠した商品カテゴリーのメーカーから出てきやすい発言です。高級オーディオメーカーとか。そこで粘る道もありますけど、タイムリミットがありますからねえ:
現状は経済基盤があって、次を見たいと思って投資をしてくれるファン層に支えてもらうしかありません。言いにくいことですが「複数買い(※編注:1人のユーザーが同じタイトルをいくつも買うこと)」っていうのが、まさにそうでしょう。だいぶ前から美少女ゲーム業界はこうした"タニマチ"的な流れに乗っていましたが、今後も加速の一途でしょうね。かつて音楽が一部の限られた貴族層の娯楽としてのみ存在したように、美少女ゲームは時代を逆行して、その流れに戻るかもしれません。一部の層のためだけに存在していくんです。だから全ての声に耳を傾けるのでなく、自分たちにお金を払ってくれている層の声を聞き分けていくことが、今後さらに大事になっていくと思います。