「通知センター」というドル箱をめぐる争いになるか?〜ネイティブ・アプリ以外でもプッシュ通知を可能にするBoxcarやPushoverのような通知プラットフォームのとりうる戦略目標とその課題
ネイティブとHTML、その決定要因としてのプッシュ通知
現状、「単にスマホに情報提供したい」だけでもネイティブ・アプリを作りがちですが、その主要な理由の一つがプッシュ通知。
iOSもAndroidも、端末にプッシュ通知したければネイティブ・アプリを作らなければならない。
サードパーティ「通知センターアプリ」
そこに目をつける人は当然いるわけで、この問題を解決するスタートアップがあります:
これらを「通知センターアプリ」と呼ぶことにします。この仕組みによって、ネイティブ・アプリを作らなくても、ウェブサイトから端末にプッシュ通知を送信できるようになります。
発想としては「端末へのプッシュ通知のためにはネイティブ・アプリが必要」「でも、たかがウェブサイトが、いちいちネイティブ・アプリなんか作るのは…」「そうだ、ぜんぶまとめて一つのアプリにすればいいじゃん!」ということだと思います。
通知センターアプリの仕組みを、もう少し詳しく説明すると、
- ユーザーは通知センターアプリをインストールする
- ウェブサイトは通知センターのサーバーに通知する
- 通知センターのサーバーから通知センターアプリに通知する
となっています。
通知センターアプリにとっての機会と脅威
すでにプラットフォーマー(AppleやGoogle)が提供していれば、こんなサードパーティは出てきにくいですね。可能性ゼロではないけど、というのは、サードパーティならではの価値がありえるから。
それに、いずれプラットフォーマー自身によって提供されるようになるかもしれません。例えばAppleはOS XにSafari Push Notificationsを搭載しました。それのiOS版が欲しいわけです、要するに。
通知センターアプリのマーケティング
さて、ウェブアプリから端末へのプッシュ通知を実現したいのは当然だとして、上述のようなサードパーティによるプラットフォームは果たして普及するでしょうか?
ボトルネックは通知センターアプリのインストールなんですよね。マーケティング上の課題が大きい。
これはAdobe Flash PlayerやAdobe Readerのマーケティングに似ています。プラグインなりアプリなりをいちどインストールしてもらえれば、そのプラットフォーム上で様々なコンテンツが動くという構造が一緒。
さて、どうなるでしょうか。
シナリオ予測
ひとつの可能性としては、「通知センターのメールボックス化」をOS側で解決できなくなってきた隙を突いて、サードパーティの通知センターが台頭してくるシナリオ。
現状スマホOSの「通知センター」は、90年代のメールボックスに似てきてます。スパムフィルターがない時代のメールボックスに。通知が増えすぎたんです。
個人的に「なるべく通知をオフにする」ことで対処しているユーザーも増えるでしょう。それは「スパムが多いから、あまりメールを使わない」みたいな話であって、生産的な方向だとは思いません。
なので、通知 (notifications) にフィルタリング/レコメンデーションが入ると、とても有用なのは間違いないでしょう。ニュースにおけるグノシー/スマートニュース的をイメージしてもらえれば。要するにノイズを減らし、(有意味な)シグナルの純度を上げるためのテクノロジー。
さて、このような「通知センターのメールボックス化」に対処するのはOSプラットフォーマーでしょうか。もたもたしていると、その隙にサードパーティが台頭してくるかもしれません。
「通知センター」の事業上の価値
通知のインターフェイスを押さえたら、それはとてつもない力の源泉になります。
いろんな事業者が、ユーザーにお知らせしたい、広告したい、通知したくてたまらないわけです。かつてはメールだった。しかし「迷惑メール」に自動分類されるようになってしまった。
次にスマホが出てきて、(ユーザーの承諾を得る)オプトイン型で、アプリをインストールしてもらって、プッシュ通知を送るようになった。しかし、あらゆる業者がユーザーにプッシュを送りすぎると、ユーザーは次第にプッシュ通知機能そのものを敬遠しだす。
そこで出てくるのは
- スパムフィルタ
- 広告
- レコメンデーション・エンジン
だと思います。Gmailはスパムフィルタと広告 (AdSense) を実現しています。ちなみに AdSense 自体がレコメンデーション・エンジンだとも言える。広告とレコメンデーション・エンジンはそういう密接な関係にあります。
BoxcarやPushoverは多分こういうことを考えて戦略を練っているんだろうと思います。
そして、問題は(繰り返しますが)アプリ自体をインストールしてもらえるかどうか、です。ウェブサイト(パブリッシャー)自体がインストール動線を作ってくれるのはもちろんですが、それだけでどこまでいけるか。大手メディアと提携すればティッピング・ポイントを超えられるか。あるいはグロースハック的なブレイクスルーが必要か。そういった点が成否を分けるのかなと。
あとがき
ちょっとむかしの Zerobase Journal のスタイルで書いてみた。2004年から2009年くらいまでの。
このブログは「書き散らす」って名付けられてますが、まさに書き散らした感がある。短文を大量投下するという書き散らしよりも、ろくに遂行せずに長文を書き散らすほうが快感だと発見しましたw いや、再発見かな。