石橋秀仁(zerobase)書き散らす

まじめなブログは別にあります→ja.ishibashihideto.net

ヤフーが新経連から脱線したうえに、新経連的な政治団体も立ち上げずに経団連に入ってるのは、社会的責任を果たしてないと思う(追記:「政策提言団体」は先日立ち上げていた、けど、懸念点も)

「法的に難しい」ものに対して「法律を変えよう」という方向に起業家精神が発揮されないのよね、日本。

 

数年前の法改正でPayPalによる個人間送金ができなくなって「日本ダメだ」と思いました。Winny、まねきTV、医薬品ネット販売規制、ダウンロード違法化など、いろいろあって、ほんの一部の例にすぎない。ダメなことがたくさんありすぎる。

 

我々の業界団体が政治的に未熟。新経連かどうかはともかく、そういう勢力が必要だと思います。

 

日本のネット業界は政治的・立法的な振る舞い方が下手すぎて、「ルールブレイカー」たりえてない。「ルールのなかでなんとかしようとする」ような頭しか働いてない。

 

ルールを壊しにいきましょうよ。もちろんスタートアップには無理だけど、大手ネット企業ならそういうこと考えましょうよ。ネット医薬品販売規制などが典型だけど、これまで防戦一方だよね。攻めようよ。

 

民間のことだけ考えて「世界を変える」とか言ってるの、未熟でしかない。

 

愚痴になってしまった。

 

頭に血が上りやすい起業家は、これを起業家批判として読んでしまうだろうけど、そういうことじゃないんだよな。そもそも一人でできないことなんだから、個人への批判ではないのだ。起業家全体への批判なのだ。

 

ではどうなればいいかというと、誰か政治的な勢力のリーダーが必要だという話になる。これは大手企業の役員とかじゃないと難しいと思う。インターネットユーザー協会(MIAU)の活動が地味になってしまうのも、結局は大手企業が連携しないからだし。

 

大手ネット企業のリーダーが、業界を政治的に動員していく必要がある。

 

その点で、新経連的な活動は必要なのだ。ぼくは政治的に賛同できないところもあるけど。ネット国有化みたいな意味不明なことを言ったりするのはどうかと思うけど。

 

そういう意味不明なところがどうにか除去できるなら、新経連はおおむね悪くないのではないかとも思ってるけど。

 

問題はヤフーが参加してないことだ。ヤフーは政治的にニュービジネス側に立つつもりがないのだろうか。新経連に参加しないなら、自ら対抗団体を立ち上げるとか、なんでもいいんだけど、なんかしてほしい。ヤフーにはそれくらいの社会的責任はあると思う。

 

だから「ヤフーが新経連から脱線したうえに、新経連的な政治団体も立ち上げずに経団連に入ってるのは、社会的責任を果たしてないと思う」。

 

もし経団連の中でヤフーが立派にイノベーション促進・規制緩和的な仕事をしたら、ぼくは誤りを認めることになるだろうけど。

 

ヤフーのひとに説明なり反論なりして欲しいです。[Podcast](http://talk.ishibashihideto.net/)もあるので。

 

## 追記

 

記事を書くタイミングが悪かった。つい先日、ヤフーが「政策提言団体」を設立していた:

 

[Google、ヤフーなどネット7社「アジアインターネット日本連盟」 著作権制度見直しなど提言 - ITmedia ニュース](http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1309/25/news107.html)

 

「政策提言団体」という言い方が微妙にひっかかりますけど、「提言」するだけでなく、ふつうにゴリゴリとロビイイングをやっていくのだと期待します。「提言」なんて誰にでも(俺にでも)できるんでね、問題は、実際の立法成果ですよ。

 

> AICJはシンガポールに拠点を持つネット企業連盟「AIC」の日本支部として発足し、Google日本法人を幹事会長社としてヤフー、米eBay、Facebook、アマゾンジャパン、グリー、ディー・エヌ・エーDeNA)の7社で構成する。

 

というのも少し気になりますね。

 

現状では残念ながら批判だけで終わってしまいます。まだ褒めるべき点が見当たらない。提言ドキュメント2本の内容も、とくに目新しいものではない。これを実際に立法につなげることに意味がある。それは文書を発表するという形の「提言」じゃなくて、泥臭いロビイイングだったりする。具体的成果を期待します。その暁にはぼくも賞賛するでしょう。

 

「提言」も「ロビイング」も、観測可能な実績で言えば、(弱小団体の)MIAUのほうが、よほどやっている。少なくとも現時点では。(なお、ぼくは以前からMIAUに寄付していて、活動報告もウォッチしてる)

 

今後の活動と、その成果に期待。

 

## 追記

 

懸念点を。

 

これって政治的には攻撃されやすいので(実態はともかく)損な見せ方なんですよね。TPPというコンテキストもあって「日本の制度を米国の都合のいいように変える米国の手先」「売国奴」みたいにネトウヨが吹き上がる要素がすでに内包されてる感じで。振る舞い方を間違えると実際にそういう批判をされると思います。口を開けば「日本の国益のため」と付け加えるくらい用心深く言葉を発していかないとw

 

「ビジネスの発展です」「グローバルです」みたいなメッセージが一番筋悪だと思う。「日本の発展のため」「日本の国益のため」って言わないといけない。

 

その意味で、最初から雲行き怪しいなあ、という印象ですね。団体名と立ち上げメンバーがよくないんですよ。ぼくは業界人だから「グーグル」と「フェイスブック」がいるからといって「米国の手先」と決めつけたりしないけど。

 

「業界の外」をみないといけない。「業界団体」の政治性って、まさにその一点にあるはずだから。「内輪」の論理が通用しない相手(=業界の外)とのやりとりをするのが「業界団体」の政治なわけだから。

 

そう考えると、上手いやり方ではないなあ、という印象。お年寄りの政治家や有権者にどう見えるか、をふつうに計算したら、こうしないんじゃないかと。立ち上げ時は「日系企業が日本の国益を考えてます」みたいにして、あとから外資系企業を入れるとか、いくらでもやり方はあると思う。

 

逆に、「なんでそうしなかったか」のほうにむしろ興味がわく。なんか狙いがあるんですかね。

 

先日[Podcast](http://talk.ishibashihideto.net/post/63080546097/information-architects-podcast-8-gxp)でも話したんだけど、ニコ動があれだけ権利侵害とかいろいろやって既得権益に挑戦的であるにもかかわらず潰されなかったのはなんでだろう、と考えたときに、**老人と政治家を味方につけた**のが決定的だったんじゃないか、という話があった。それがすべての要因でないにしても、かなり重要。日本では実際に老人と政治家を味方につけないとヤバいことはできないはずなのだ。