石橋秀仁(zerobase)書き散らす

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"visual design" と "graphic design" の違い〜概念整理

同じ「視覚的」と解されがちな “visual” と “graphic” の違い。とくに “visual design” と “graphic design” の違いが気になるので調べた。

visual

visual は sight (視力)や seeing (見ること)に関わる。文字通り「視覚的」という意味。 語源 によれば "coming from the eye or sight" (眼や視力に由来する)とある。

後述の graphic と比べれば、人為性や能動性がない意味でも使える。例えば visual perception (視覚)など。これを graphic perception と呼ぶことはできない。同様に visual sense や visual information にも気をつける必要がある。

graphic

graphic も visual に近い意味を持つが、とくに writing、engraving (彫刻)、lettering などに関する意味を持つ。 語源 的にも writing や drawing の意味が強い。いわば、人為性や人工物を指し示す作用が visual よりも強い。 "-graphy" という語尾形になると、ほぼ「書く」という意味に限られてくる。例えば:

  • autography (自筆:auto 自 + graph 書く)
  • biography (伝記:bio 生 + graphy 書く)
  • ethnography (民族誌:ethno 民族 + graphy書く)
  • 数学で使うグラフ (graph)

などだ。

おそらく graph には「人為的でない物や行為」を指し示す用法はほとんどない。写真に関する graphic の用法(例えば自然物を撮影した場合)も、あくまで「写真も人工物である」という意味において「人為的な物や行為」を指している。

なお、注意すべき点として、graphic にも独自の意味がある。 graphic の意味すべてが visual に含まれているわけではない(部分集合ではない)。例えば "giving clear and vividly explicit details" (はっきりくっきり細部まで明らかにする)という意味が graphic にはある。

なお、 graphical という言葉は graphic の同義語である。単なる音便変化だろう。

結論(実践的指針)

visual design と graphic design は同義語。ウェブ上でも明確な違いが見つけられなかった。そもそも design が人為なのだから、すべての visual design は graphic design と呼んで差し支えない。大雑把に抽象的すれば、すべての design 行為は「描くこと/書くこと」だとみなせる。

そもそも日本語に置き換えて(翻訳して)考えることを推奨しないが、あえて言えば graphic を「視覚的」と考えるのは間違い。語源から考えると「描かれた/書かれたもの的」というイメージ。

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