石橋秀仁(zerobase)書き散らす

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「アメリカの独創的なアプリとそれを模倣する日本のアプリ」という問題と対抗戦略

「なんでアメリカのアプリは素晴らしくて、日本のアプリはそのマネばかりなのか」という問いを見かけた。

こう答える。

「ビジネス規模、動くカネ、デザイン予算規模の違いが最大の要因だ」と。

日本にもできる

億単位で資金調達して、独創的なデザインへの投資に経営者がコミットしている日本のベンチャー企業を知っている。

「日本にはできない」という命題は事実によって否定されている。

(「ある」「ない」ではなくアメリカのほうが日本より「多い」という数量比較の問題についても、のちほど回答する)

「日本だからできない」ように見えているのは単なる見せかけで、実際には「相対的にカネがないからできない」のだ。

そして、「相対的にカネがない」理由は、「日本語商圏は英語商圏より小さいから資金調達規模も異なる」のが大きい。

(細かいことを言えば、もちろん商圏規模だけで決まらないわけだが、支配的要因は何かということ)

なので「アメリカ」と「日本」という対立構図は、問題の本質を捉え損なっている。それだけでなく、ともすれば民族主義的な対立構図は、簡単に言うとネトウヨが沸いてきて本質的な議論をやりにくくなる。問題設定が二重の意味でマズい。

私が妥当だと考える問題設定と、それによる回答の提出は、すでに述べた通りだ。

先に保留しておいた数量比較問題(アメリカのほうが多い)の原因も同じだ。

よって、もし「日本がダメ」だという現状認識を主張するならば、まずは日本がアメリカに比べて「質的にダメ」であることを証明しなければならない。

私には、「質的にダメ」だと言う主張には根拠がないように見える。あれば提示してもらいたい。

さて、いったん議論を区切って、先に進もう。

日本にとって有効な戦略

前向きに「日本企業に何ができるか」について語りたい。

前提として、比較対象よりも制約の厳しい環境下に置かれているのだから、選択肢は少ない。

有効なのは「弱者」なりの戦略・戦術だ。

私自身は「少ない予算を最大限に活用する開発手法やデザイン・プロセスの洗練」が大事だと思っている。

これは10年前から私の実践指針でもある。日本にいながらアメリカと同じことをやっても意味が無いしジリ貧なのだから。

さらに具体的に言えば、少なくとも二つの戦略がありえる。

破壊的イノベーション戦略

相手の規模の大きさを利用する「破壊的イノベーション」への取り組みが有効だと考えている。

「破壊的イノベーション」とは、巨大なプレイヤーを「イノベーションのジレンマ」に直面させるイノベーションのことだ。

つまり、「制約を強みに変える破壊的イノベーション」という戦略だ。

ニッチ戦略

もう一つ、別の戦略がある。徹底的にハイ・コンテキストでローカルなビジネスをやることだ。

気をつけなければならないことは、多少「ニッチ」だと思っていても、ウェブのエコシステムでは巨大プレイヤーのイノベーションに飲み込まれてしまう。

巨大プレイヤーは、こちらを「競争相手」と思っていないし、それどころか、存在すら認識していない場合もある。それなのに、殺される。

まるでダンプカーがアリをひき殺すように。

それを避けるには、ダンプカーが通らないようなところ、そして、将来にわたってダンプカーがやってきそうにないところを選んで、そこで生きていく戦略をとればいい。